電子機器設計に必須!熱電対を用いた表面温度測定のポイント解説

電子機器設計に必須!熱電対を用いた表面温度測定のポイント解説

電子機器の設計や品質管理では、部品の表面温度を正確に測定することが重要です。中でも、熱電対を使用した表面温度測定は、接触型の手法として高い信頼性を誇り、広く採用されています。本記事では、熱電対の基本から選定方法、設置時の注意点までを解説し、測定精度を向上させるための実践的なポイントを紹介します。

熱電対の基礎知識

熱電対は温度測定における基本的なセンサのひとつであり、その仕組みと種類を理解することが精度の高い測定に不可欠です。

熱電対とは?

熱電対は、異なる2種類の金属線を接合し、その接合部で発生する熱起電力(電圧差)を利用して温度を計測するセンサです。この仕組みにより、特定のポイントの温度を正確に把握できます。非接触型センサと異なり、熱電対は直接接触するため、部品表面や基板上の小さなエリアの測定に適しています。

熱電対の種類

電子部品の表面温度測定で一般的に使用される熱電対は以下の通りです:

  • K型熱電対: 広範囲な温度測定に適しており、汎用性が高いです。特にクラス1の製品を選べば、高精度な測定が可能です。
  • T型熱電対: 低温領域での測定に優れ、精度が求められる場面に適しています。銅を使用しているため、信号の安定性が高いのも特徴です。

用途や測定環境に応じて適切な種類を選定することが重要です。

正確な温度測定を実現する熱電対の選定

熱電対を正しく選定することで、測定の信頼性を大幅に向上させることができます。

線径とクラスの選択

熱電対の線径は、測定精度に大きな影響を与えます。細い線径(AWG36~40)は放熱が少なく、測定精度が向上します。また、JEDEC規格ではクラス1の熱電対が推奨されており、誤差が最小限に抑えられるため、信頼性の高いデータが得られます。

先端部の処理

熱電対の先端部は、温度測定の要となる部分です。接合部は溶接処理を施し、小さく仕上げることが望ましいです。溶接を行わず、素線をねじるだけの処理では放熱が増加し、正確な測定が困難になります。溶接された先端部は、余分な熱の損失を抑え、精度の高い測定を可能にします。

熱電対の取り付けと管理

熱電対を効果的に設置し、正確なデータを取得するためには、適切な固定方法と取り回しが重要です。

固定方法の選択肢

測定対象への固定には、以下の方法が一般的です:

  • ポリイミドテープ: 簡単に固定でき、取り外しも容易です。ただし、熱伝導率が低いため、測定精度への影響が懸念されます。
  • エポキシ接着剤: JEDEC規格で推奨される方法で、固定力が高く、測定中の位置ずれを防げます。特に長時間の測定や高精度が求められる場合に適していますが、固定に時間がかかるため事前準備が必要です。

素線の取り回し

熱電対の素線を適切に配置することで、測定精度が向上します。素線を測定対象の表面に沿わせることで、放熱による誤差を最小限に抑えることが可能です。また、素線が自由に動かないよう固定することで、一貫したデータが得られます。

設置位置と測定精度への影響

熱電対の設置位置や測定対象の特性により、測定結果が大きく変わることがあります。

設置位置の重要性

熱電対は、測定対象の熱の中心部に正確に設置する必要があります。ICパッケージの表面温度測定では、中心からのわずかなズレが大きな温度差を引き起こす可能性があります。そのため、設置位置を厳密に特定し、ズレが発生しないよう注意してください。

小型部品の測定時の注意点

小型パッケージでは、熱電対自体の放熱が測定結果に影響を与えることがあります。この場合、細い線径の熱電対を使用し、素線の取り回しや固定方法を工夫することで、測定精度を向上させることができます。

実践での応用ポイント

熱電対を活用した表面温度測定を効率的に行うための具体的なポイントを紹介します。

精度を高めるための工夫

  • 接合部を溶接し、放熱を抑える。
  • 素線を測定対象に密着させ、余分な熱損失を防ぐ。
  • JEDEC規格に準拠した方法を採用し、測定条件を標準化する。

測定環境の管理

測定対象の周囲環境を管理し、結果への外的影響を排除します。静止空気中での測定を行い、外部の熱干渉を防ぐことで、一貫性のあるデータを得ることができます。

おわりに

熱電対を用いた表面温度測定は、電子機器設計における性能評価や品質管理に欠かせない技術です。その精度を高めるためには、熱電対の選定や設置方法を適切に実行することが重要です。本記事で紹介したポイントを実践し、信頼性の高い温度測定を通じて、より高品質な製品設計を目指してください。